記載内容は2021年3月現在。
写真はクリックで拡大表示します。ブラウザーの<戻る>でお戻りください。
東海道・山陽新幹線の主力として登場 |
記載内容は2021年3月現在。
写真はクリックで拡大表示します。ブラウザーの<戻る>でお戻りください。
1999年に登場した700系は、300系に代わる東海道・山陽新幹線のスタンダードとして、JR東海と西日本が共同開発した車両です。当初は「のぞみ」3往復のみでしたが、順次拡大され、2003年秋からは定期「のぞみ」は700系と500系で運用されるようになりました。
先発のJR西日本500系が、もっぱら「時速300kmを目指す車両」として開発され、その目標を達したのに対し、700系はあくまで量産車としてのトータルバランスを追求した車両です。最高速度は285km/hに抑えられているかわりに、500系では幾分犠牲にされた車内の居住性との両立が図られています。
「のぞみ」用に投入された車両は16両編成で、側面は0系以来の伝統を踏襲した白地に青ライン(ただし、0系や100系のように窓周りに青ではなく、300系と同様に窓の下にラインが入る)。自販機以外の食事提供設備は初めからありません。先頭は靴のつま先のように、横に丸く縦に扁平なスタイル。シャープなデザインの500系と比べると、あまり「格好いい」という印象は受けないにせよ、騒音を軽減し、かつ500系のように「鼻」に長さを費やして客室を狭くすることのないようにと、考え抜かれた形状です。
16両タイプはJR東海車が多いものの、比較的少数派ながらJR西日本も保有しており、こちらは運転席横に青色の「JR700」のロゴがついていたり、側面の表示器がLEDであったりという違いがあります。
2000年春には、JR西日本が独自に、「ひかりレールスター」としてこの車両を投入しました。それまで、山陽区間(新大阪〜博多)には0系の「ウエストひかり」が走っていましたが、それを一気に置き換え、スピード、サービスとも大幅に向上しました。「レールスター」用700系はグレー基調の独自塗装で、一見すると「のぞみ」用車と同じ形式とは思えないほど、イメージが変わっています。「レールスター」用編成は8両。山陽新幹線区間の輸送量を考えると、編成を短くして頻度を確保するほうが得策との判断だったのでしょう。
「レールスター」にはグリーン車がない代わりに、指定席は2列+2列のゆったりめの座席で、全体的に居住性を高めているのが特徴で人気も高い。このほか、車内放送無しの「サイレンスカー」や、4人使用できるコンパートメントなどの新機軸もみられます。
私の「レールスター」初乗車は2000年5月。ここに書いているとおり、大混雑でひどい目に遭いましたが、デッキですし詰めになったときに、意外なかたちで700系の性能を思い知ることになりました。普通、車両の端にあたるデッキ部では、足回りからくる振動がじかに伝わり、特に加減速時やカーブにおいては揺れや音が激しいものです。(だからこそデッキとして仕切り、客室の静寂性を保っているのです。)ところが「レールスター」では、デッキで不安定な姿勢になっていたにもかかわらず、加減速の動きはいたって滑らかで、ふらつくことはほとんどありませんでした。音も静かで、客室内と大差ないと思えるほど。新幹線の技術もここまできたかと、感銘を受けました。
ちなみに帰りは指定席だったので、がっしりした2列シートの座り心地を堪能できました。
2003年秋改正で、東海道区間は「のぞみ」中心に、そして山陽区間では「のぞみ」と「ひかりレールスター」が主力となったため、東海道・山陽新幹線は700系の天下という情勢になりました。しかしJR東海・西日本両社は、700系をベースに、早くも次世代の「N700系」を2007年7月より導入。これにより、700系もまた「前世代の車両」となってしまいました。
2010年春改正で東海道・山陽直通の定期「のぞみ」がN700系に統一、2012年春改正ですべてがN700系となったため、700系は定期の「のぞみ」から追われ、以降は300系に代わって東海道区間の「こだま」、「ひかり」(岡山乗り入れ列車を含む)、および臨時「のぞみ」としての運用が主体になりました。また2011年度には、300系置き換えのために、JR東海車両の一部がJR西日本に移籍しています。
また、JR西日本・九州は、2011年3月の九州新幹線(鹿児島ルート)全通に合わせて、「みずほ」「さくら」用の新車両(N700系7000/8000番台)を投入しました。これらは実質的に「レールスター」の発展・延長的な存在で、それに伴い「レールスター」用700系は本格的に「こだま」に転じはじめました。2012年春改正でさらにN700系への置き換え・直通化が進み、2020年3月ダイヤ時点で「ひかり」として運転される「レールスター」は下り1便・上り2便だけとなっています(通過駅より停車駅のほうが多く、「さくら」がすべて通過する西明石や東広島などにも停車します)。
「ひかり」としてはわずかな運用となった「レールスター」。N700系に抜かれる
16両編成の700系は次第にN700系に置き換えられ、東海道区間では19年12月をもって定期運用を終了。20年3月に予定されていたお別れ運転が新型コロナウイルス流行により中止されてしまい、寂しい幕切れとなりました。山陽区間では改正前日の20年3月13日まで「ひかり」1往復で運用され、これが16両編成の最後の定期運用となりました。
西日本の「レールスター」車両は引き続き運用されていますが、初期車は20年以上を経過しており、それより古い500系を含め遠からず去就が取りざたされるかもしれません。