チューブ形の独特な車体で初の最高300km/hを実現も
N700系に追われ、現在はこだま専用
登場:1997年
在籍:

  記述は2015年12月現在。
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 スピード命

  81年にTGVにトップの座を奪われて以来、速度面でフランスの後塵を拝する立場になってしまった日本の新幹線ですが、97年にJR西日本が世に送り出した「500系のぞみ」は、300km/hという当時の最高速度でTGVに肩を並べました。駅間の平均速度(広島〜小倉間)では、当時世界最速でした。

  すでに最高270km/hの300系のぞみが活躍していましたが、比較的完成が新しく線路のよい山陽区間ではさらなるスピードアップが見込まれたことから、JR西が技術の粋を集めて開発。騒音面の難問を、かのチューブ形(ミミズ形?)のボディや、T字形の集電装置などの工夫でクリアし、デビューの運びとなりました。(集電装置は、8両編成への改造時にシングルアーム形に変更されています。)

500系「のぞみ」の通過 

  97年末からは新大阪以東の東海エリアにも乗り入れ、東京〜博多間の所要時間が5時間を切りました(最短4時間49分。ただし現在の「のぞみ」は当時より停車駅が増えたため、同じく最高300km/hのN700系でも、ほとんどが5時間を超えています)。やがて直通「のぞみ」の半数を500系が占めるまでになりましたが、製造費が高価だったこともあり、以後の増備はJR東海・西共同開発の700系に移行しました。

  500系の大きな特色の一つは、先頭車の先端部が針の先のように鋭くとがり、1両の3分の1ほどを「鼻」の部分に費やしているということです。これは、トンネルに突入するときの気圧の壁(出口部分で破裂音を起こす)を作らないための構造だそうで、300キロという未知の領域に挑むための工夫の一つでした。

シャープな「鼻」の長さが際立つ 

  また500系は、従来の東海道・山陽新幹線の伝統的配色であった「白地に青ライン」を、イメージ的には踏襲しつつも、ボディーをメタリック調のグレー、ラインを紺と青とし、「未来の電車」的な仕上がりになりました。

0系を追い抜く 

  ただし、その円筒型の車体ゆえに居住性にやや難があったうえ、ドアや座席の配置等、構造の特殊な500系が混ざって運用されるのは、特に東海道側ではネックとなる状況でした。JR西日本側でも、2000年に700系を使用した「ひかりレールスター」がお目見えすると「看板列車」の座はそちらに移ってしまいました。500系は700系に速度で勝っていたとはいえ、少数派ゆえに扱い上中途半端な存在になってしまった感があります。

  700系の後継として新たな標準形となったN700系が07年7月にデビューすると、500系で運転されてきた列車が順次N700系に置き換えられました。N700系は山陽区間で最高300km/h、加速性能や曲線通過速度を向上することで東海道区間でもスピードアップを図ることが出来、速度が取り柄の500系はお株を奪われる格好になりました。

 こだまとして再出発

  2008年3月改正で、定期運用を持つ500系「のぞみ」はわずかに2往復のみとなりました。09年11月からは1往復、そしてついに2010年2月末をもって「のぞみ」から退き、同時に東海道区間から撤退することになりました。

末期の500系「のぞみ」(右)。左は「こだま」 

  500系は全9編成中第1編成(廃車)を除く8編成が8両編成に改造され、山陽区間の「こだま」用に転用されることになりました。8両編成の500系の最高速度は、700系と同じ285km/hとされています。これは、やはり「こだま」への転用が進む「レールスター」用車両と同等です。

「こだま」用8両編成 

  500系「こだま」は08年12月1日より、前日まで運転された0系と入れ替わりで運転を開始しました。スピードの金字塔を打ち立てた500系が「初代」に引導を渡す格好となったのも皮肉な感じがします。なお,2012年3月改正から、岡山→広島間という短区間ながら、500系を使用した「ひかり」が1便設定されていましたが、翌年になくなっています。

  短編成化にあたっては、基本的に従来車の設備が流用されていますが、N700系と同様に、喫煙ルームを設けて全席禁煙となっています。普通車のみで座席は2+3列ですが、指定席の6号車はグリーン車を流用しているため、座席も2+2列でゆったりめに配されています。(現在では4,5号車も4列席に変更。)

グリーン車から転用された6号車の車内 

  円筒型の車体ゆえに、他の車両と比べるとやはり、頭上に若干の圧迫感があります。しかし居住性は悪くはなく、先を急がないのならば、十分選択肢に含めて良い車両といえるでしょう。

  2014年7月には、1号車の座席を撤去しプラレールのジオラマや疑似運転台、プレイスペースを配した「プラレールカー」が登場し、新大阪〜博多間で1日1往復運転されました。この列車は好評を博し、2015年8月末まで運行されました。

「プラレールカー」として運転された編成の1号車 

  2015年11月には、アニメ「新世紀エヴァンゲリオン」とのコラボレーションで、「500 TYPE EVA」が登場。上記プラレールカー編成を再度改造、大胆な塗装を施し、1号車にはエヴァンゲリオンのコクピットが再現されています。

エヴァンゲリオンをイメージしたデザインの「TYPE EVA」 

 

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