京阪神の「新快速」用に登場
アーバンネットワークの顔として活躍、現在も広範に運用
登場:1989年
在籍:

  記載内容は2020年3月現在。
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 挽回の切り札

  JR西日本は発足の初期から、お膝元である近畿圏の主要路線網を「アーバンネットワーク」と銘打って充実化を図ってきました。首都圏と比べて利用規模が小さく、しかも既に私鉄各社がネットワークを確立していた中にあって、その牙城にいかに食い込むかが課題でした。その中核をなすのがJR京都線・神戸線であり、新快速はJR西日本の看板を背負う列車となりました。

  急行用電車153系を使って1972年に本格スタートした新快速。79年に登場した117系は私鉄の特急車両を強烈に意識した造りで、当時の国鉄としては破格のサービスを供しました。そして民営化からわずか2年、その系譜を受け継いだのが221系でした。他のJR各社がまず特急車両を開発した中で、JR西日本はこうして近郊車両を最初に投入したあたり、221系に社運を託したその意気込みが感じられます。

登場間もないころの221系新快速 

  転換クロスシートや大きめの窓といった117系の持ち味を継承しつつ、広い天井に明るい内装と、より開放的な装備となりました。ボディは白を基調に、JR西日本のシンボルカラーである青色を、戦前の「急電」譲りの新快速カラーである茶色とベージュのラインで挟むデザイン。117系新快速が好評を博するにつれて2扉構造が乗降のネックになっていたことから、221系は3扉となり機能性も向上しました。(3扉のオール転換クロスシート車両というのは、当時としては画期的でした。)最高速度は120km/hとなり、複々線(草津〜西明石間)を駆使した豪快かつ緻密なダイヤは、先を急ぐ気質の関西人にはうってつけでした。

221系車内 

  新快速の運転区間は東西に伸びて、東は長浜、西は上郡・播州赤穂にまで達し、本数も充実しました。京阪神間の停車駅は当初より増えたにもかかわらず、所要時間はむしろ短縮されました。117系が基礎を築いた新快速のステータスを、ひとつの完成形にしたのが221系だったといえます。

  221系はさらに、大阪から環状線・関西線経由で奈良に至る「大和路快速」にも投入され、一方押し出された117系は福知山線や奈良線などアーバンネットワークの各路線へ転属、関西近郊全般のレベルアップに貢献しました。

 ハイレベルな世代交代

  私もこれまで何度となく乗車し、米原〜神戸間の2時間近くを通しで乗ったこともありますが、それだけ乗ってもあまり疲れを感じない電車です。乗り心地の良さもあるでしょうが、豪快な走りで気が紛れるというのが大きな要因でしょう。

  もともと設備面で有利な要素を持ちながら、「国鉄」ゆえのサービス意識の低さや運賃の高さ(並行する私鉄と比べて倍近くしていた)が災いして鳴かず飛ばずだった80年代以前から一転、JRは次第に私鉄各線に対して優位を築いてゆきました。民営化後は消費税分以外の値上げをしていないために私鉄との運賃格差が小さくなったことや、95年の阪神淡路大震災後に阪神間で最も早く全通したことも追い風となりました。こうしたJRの台頭は私鉄各社の戦略にも大きな影響を及ぼし、長年それぞれの独自色が強くあまりまとまりのなかった各社の新たな協力関係を生み出すことになりました。

  と、「アーバンネットワーク」の地歩固めに大いに貢献した221系でしたが、京都・神戸線では後継の223系登場以後は快速としての運用が中心となり、ついに2000年3月には新快速から完全撤退。足早な世代交代となりました。最近では221系と性能を合わせた223系(6000番台)と併結運転されることも。

「後輩」223系との並び 

快速として神戸線で引き続き活躍 

  現在では京都・神戸線の快速や「大和路快速」のほか、奈良線の「みやこ路快速」のほか、山陰本線、湖西線など近畿圏の各線で広く運用されています。かつては福知山線、阪和線などでも快速として運用されていました。

「みやこ路快速」と「大和路快速」 

福知山線「丹波路快速」。今では223系に置き換えられている 

  登場から20年以上が経過し、最近では順次体質改善工事が施されています。前面照明の交換・LED行き先表示器の増設(種別幕の右側、従来青いJRマークが付いていた部分)、車内トイレの大型化、ドア付近の座席の撤去(補助席化)などの改造が行なわれています。

体質改善車。223系と組む 

先頭部に転落防止幌が取り付けられた 

  なお、JR西日本は2023年度までに225系を京都線・神戸線に投入して、221系を大和路線やおおさか東線に転属させ、残存する201系を置き換える計画です。これにより京都線・神戸線の車両性能を統一化するとともに、おおさか東線などは3ドア車に統一し、ホームドアの設置をしやすくする狙いがあるのかもしれません。

 

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