記載内容は2015年9月現在。
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近畿圏の新しいスタンダード通勤車として登場 |
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「207系」という形式は、国鉄時代の1986年に関東で試作車として1編成だけ作られていました。しかしこの「東の207」は後が続かず、その数字だけを引き継いだ「西の207」が登場しました。以下、当記事では専らJR西日本所属の207系を扱います。
1991年にデビューした207系は、東海道・山陽線(JR京都・神戸線)各停や片町線(JR学研都市線)の103系置き換え用として増備。1997年に片町線(JR学研都市線)と福知山線(JR宝塚線)を直結する路線として開通したJR東西線は、全列車207系で運転されていました。(現在では一部321系が入ります。)
尼崎を拠点に、JR学研都市線〜JR東西線〜JR宝塚/神戸線、JR京都線〜JR神戸/宝塚線という、複雑な直通運転が行なわれています。学研都市線では木津を越えて奈良まで、宝塚線では篠山口まで、神戸線では加古川まで乗り入れます。学研都市線京橋〜松井山手間と、宝塚線尼崎〜三田間では快速運転も行なわれます。また、おおさか東線を経由して奈良と尼崎を結ぶ「直通快速」としても運行されています。
さて、一般に「通勤形電車」というのは、求められるのはまず輸送力であり、また車両数が多いことから量産のコスト性が重視され、居住性に関しては期待できないものでした。大量生産の101,103系、そしてそれ以降の国鉄世代の通勤電車の系譜を見ると、そうした首都圏サイドの発想が色濃く感じられます。
片や関西では、サービス精神旺盛な私鉄各社と比べ、国鉄時代の通勤電車は明らかに見劣りするものでした。従って、JR西日本が「私鉄王国」の版図を切り取るためには、よりクオリティの高い通勤形電車を導入することが求められました。そのニーズを受けて登場したのが、207系電車でした。
207系の印象として、まず車内の明るさと開放感に驚きました。窓が大きく取られ、客室が広々と感じられます。快速用の221系などと同様、運転席と客室との仕切りがガラス張りとなり、前面展望も十分楽しめる点も、従来の通勤電車との大きな違いです。座席は清潔感あるブルーで、よくクッションが効いていて座り心地がいい。(これは好みの分かれる点かもしれません。)これだけ快適な通勤形電車にはお目にかかったことはなく、「新快速」にも匹敵するサービスだと感じられました。
こうした車両に慣らされると、首都圏の車両はやはり安っぽく、「輸送手段」という印象になります。もっとも、だからこそ大量の車両を一度に置き換えられるわけで、対して関西ではなかなか国鉄世代車の淘汰が進まず、総合的な観点で考えると果たしてどうかという話になります。需要と財力の違いがあるため、一概には言えないところです。
なお207系には7両の固定編成と、3両+4両の編成があります(前者は初期の試作的な編成。)学研都市線では木津〜京田辺間が4連までの対応だったため、京田辺で3連の増結・開放を行なっていましたが、2010年からはすべての区間が7両に対応できるようになったため、通常編成が分割されることはなくなりました。
また103系のピンチヒッターとして和田岬線に入ることもまれにあり、この場合は3両編成、または3+3の6連となります。
登場から10年以上が経過し、しばらく休止していた207系の増備が、2003年になって再開されました。新たな増備車は、窓ガラスが緑色になるなどの変更が加えられています。2005年度からは207系をベースにした「321系」に移行し、数年のうちに京都・神戸線の201,205系を置き換えて、さらなるスピードアップを図ることになっていました。が・・・
2005年4月25日、宝塚線(福知山線)塚口〜尼崎間で起きた、脱線・転覆事故。大幅に速度超過した電車がカーブで脱線、マンションに激突して大破するという信じがたい事故で、死者107名を数え、国内の鉄道事故としてはここ40年来で最悪の大惨事となりました。まさにその「当事者」となったのが、この207系でした。
飽くなきスピードアップと増発を軸に業績を伸ばしてきたJR西日本は、安全を軽視してきたとの猛烈な批判にさらされ、その施策は根本から見直しを迫られることが必至となりました。
2005年12月、当初予定よりやや遅れて321系がデビューしました。前面のガラスのカーブや黒縁は207系のイメージを踏襲しているものの、側面のラインは青と水色から紺とオレンジに変更されました。併せて、207系のラインカラーも05年度中に同様のものに変更。尼崎事故のイメージを払拭するとともに、アーバン圏の主力である207系からJR西日本の社色を外すことに、自戒の意味も込めたのかもしれません。
207系も登場から20年以上が経過し、2014年からは体質改善工事が施されるようになりました。先頭部が321系に近いデザインになり、行き先表示器のフルカラーLED化、車内の座席や手すりの変更などが行なわれています。