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 春先の積雪


 1993年3月17日
 三田→城崎→餘部→下夜久野→和田山→姫路→粟生

  三田市は大規模なニュータウン開発により発展著しく、その玄関となるJR三田駅は福知山線複線電化を機に建て替えられた近代的な橋上駅。ただし近辺は比較的古びた町並みのままであり、そのいびつさが際立っている。そんな新旧混在する三田から、今回の旅はスタートする。

  三田 6:28 → 城崎 9:37 [普通 2525M/電・113系]

  まずは、福知山線下り一番電車(城崎行き)で北を目指す。3月後半の遅い雪で、北上するにつれて積雪も。しだいに空には重苦しい雲が立ちこめ、「日本海側」の雰囲気になってきた。1番電車の割に乗客は多く、中にはスキー板を持った人たちも。

  篠山口からは篠山川の渓谷を進む。谷全体が真っ白に雪化粧しており、谷川までずっと見入っていた。谷川から通学客も増えてきて、電車はかなりの混雑に。積雪はさらに多くなったものの、時間の経過で解け始めており、春の雪のはかなさを思う。

早朝の篠山川渓谷は雪化粧 

  山陰本線に合流する福知山で客はごっそり降りてしまい、数えるほどになってしまった。今回特に印象的だったのが、福知山から和田山までの山越え区間。悠々と座席に座り、谷間の雪景色を満喫する。積雪は最高15cmほどで、すべてが雪に埋もれ、梅の木だろうか、川べりに植わった2本の木に、雪の「花」が咲いている姿には感動を覚えた。

  そんな雪景色も山を越えるまでで、和田山まで下ると雪はほとんどなくなり、反比例して乗客はしだいに増えてくる。その乗客も北兵庫の中心地・豊岡でほとんど下車してしまい、右手に幅の広い円山川が沿ってきて、三田より3時間弱を乗り通した「雪見道中」は終わりを告げる。

  城崎は名だたる温泉街で、かになどを売っている土産物屋街は人の往来が激しい。滞在時間はあまりないので温泉街を散策したり、小高い丘に登って町並みを眺めたりして過ごす。空は相変わらずどんよりしており、三方を山、一方を円山川に囲まれた窮屈な場所に、建物が所狭しとひしめいている。(温泉町といえば、大体そんなものだが。)駅弁「かにずし」を調達して、さらに列車の旅を続ける。

高台から城崎駅、温泉街、円山川を望む 

にぎやかな温泉街・城崎。しかし景色は寒々しく・・ 

 冬の名残、春の足音

  城崎 11:04 → 餘部 11:45 [普通 3173D/気・キハ183系]

  城崎より先の山陰線は非電化で、本線とは名ばかりのうらぶれたローカル線。次の列車は、鈍行なのに何と特急用の181系!の大盤振る舞い。竹野からは日本海が見えだし、海を見下ろしながら特急の座席でかに寿司を食するという、なんとも贅沢なひとときを過ごしたのであった。

  漁港の町香住を過ぎ、鎧を出発するとトンネルへ。そのトンネルを抜けるといきなり、空中に放り出されるかのように、入り江の村落のはるか頭上へ。

  余部鉄橋。谷間の漁村が、文字通り足下に望まれる。橋を渡りきるとすぐ餘部(あまるべ)駅に到着。ホームと小さな待合室しかない、無人駅だ。

鉄橋上より。餘部の入り江に激しく打ち寄せる波 

  列車を降りると早速、ズズーンと腹の底にくるような波の音が、谷間一帯に響いてくる。駅から村落へ降りる道は、人が通れるだけのあぜ道のような道で、下手をするとどこかの民家に入って行ってしまうのではないかとさえ思える。

  もう3月も半ば過ぎとはいえ、この日の日本海は冬の顔。海は荒く白いしぶきが立ち、高い波が岸に激しく打ち付けてドドーンと砕け、そのたびにドキリとさせられる。少し離れて橋の全容を眺め、次いで真下から見上げる。赤く塗られた無骨な鉄橋。風雪に耐え、列車墜落の悲劇も生みだした橋・・。そんな感傷にふけっていた時、地元のおばあさんに、あいさつの声をかけられ、何とも気恥ずかしくなった。

鉄橋上をゆくディーゼル車 

  餘部 13:21 → 豊岡 14:16 [普通 178D/気・キハ47]

  今回の山陰の旅はここまでで、あとはもと来た道を引き返す。空はようやく明るくなってきたものの、日本海は依然波が高く、しぶきが上がっている。山々の木々に春の気配を感じつつ、ぼーっと過ごす。豊岡では1時間ほど、町を歩く。めぼしいものには出会えなかったが、「かばん」と「こうのとり」が何かと目立っていた。かばんはこの地方の特産なのだろう。同じ県に住んでいても、知らないことは多い。

豊岡の円山川 

  豊岡 15:15 → 下夜久野 16:05 [普通/電・113系]

  帰りは、和田山から播但線を南下することにしている。でもその前にぜひ、あの福知山〜和田山間の雪景色をもういちど見ておきたい。ということで、和田山を通り越して峠越え。だが。

  山を越えて京都府に入っても、あれだけ一面に積もっていた雪が全く見あたらない。なんとひとかけらも残っていなかった。あれは一体何だったのか。だまされているような気持ちになった。春の雪とは、ここまで儚いものなのか…。

  下夜久野 16:30 → 和田山 16:51 [普通/電・113系]

  下夜久野で引き返し、和田山へ戻る。朝に見入った2本の木が、また目についた。こんどは「本物の」花をつけて立っていた。

  和田山 16:53 → 姫路 18:37 [普通 670D/気・キハ58系]

  播但線の列車は混雑していて、途中まで立ち席。あとは空も次第に暗くなり、旅もフィナーレを迎える。今回の旅は、ちょうど冬の名残と春の気配を同時に感じる道中だった。姫路に向けて客は増え、外は夕暮れ。

  姫路 18:43 → 加古川 18:53 [新快速 3642M/電・221系]
  加古川 18:57 → 粟生 19:23 [普通/気・キハ40]

 

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