写真はクリックで拡大表示します。ブラウザーの<戻る>でお戻りください。
|
写真はクリックで拡大表示します。ブラウザーの<戻る>でお戻りください。
1991年12月30日 三ノ宮→長浜→敦賀→小浜→東舞鶴→西舞鶴→三田 |
91年もまもなく終わろうかという12月30日。朝の神戸には、珍しくうっすらと雪が積もっていた。今回の旅行は、夏の旅行と同じく「青春18きっぷ」を使用するが、夏とは反対の方向、つまり東・北を目指すことになる。神戸でこのぶんだと、これから向かう滋賀や若狭湾方面は結構な雪模様だろう。「雪見旅」には絶好。期待が高まる。
三ノ宮からの出発第一号となるのは、九州からやってきた京都行きの夜行快速「ふるさとライナー九州」。これは、夏には「ムーンライト九州」として運転されていた列車であり、8月の中国・九州旅行の際に2度乗車した、なじみのある列車である。もちろん「快速」扱いなので、ルール上はなんら問題ないのだが、特急のような車両を使った夜行列車に、通勤電車のように乗り込むとは妙な気分もする。
茨木あたりを過ぎると、北上に伴い沿線に雪が目立ってくる。京都からは、それまで抜きつ抜かれつを繰り返していた221系の快速(京都からは普通)に乗り換え。
山を越え、滋賀県入り。積雪は一気に増えた。大津でいったん改札を出てみる。駅前にも10センチほど積もっており、雪をほとんど経験しない私は、それだけで興奮してしまう。
さらに北上すると、野洲あたりからはますます雪深くなってきた。平地が広がり、雪だるまを作る子供たちの姿も。
米原から北陸本線に入り、琵琶湖東岸に位置する長浜へ。豊臣秀吉が最初に一城の主となった地で、駅前には秀吉と石田三成の像がある。旧街道の古い町並みを歩き回り、まずは、かつての長浜駅を活用した長浜鉄道資料館へ向かう。しかし、ある程度予想はしていたことだったが、年末のため閉館。外から概観するにとどめる。
長浜城(こちらも外から眺める)などを巡り、琵琶湖を一望。空には晴れ間が見えだしたものの、15センチほどの積雪で歩きにくい。でも足跡を付けるのが楽しい。
長浜からさらに北陸本線を北上することになるが、ここからは交流電化区間に入るため、車両の顔ぶれが大きく変わる。今回乗った電車は419系。夏に乗った715系と同じく、余剰になった寝台特急車両583系を改造したぶかっこうな車両だ。天井が高く、室内が暗い。一面に雪が積もって真っ白な田園地帯を進む。
近江塩津から峠を越え、福井県入り。私にとっては、生まれて初めての北陸入りとなった。敦賀まで下ると雪は少なくなってきた。それまで、「雪は北へ行くほど多くなる」と思いこんでいた自分にとって、これは意外な展開だった。
敦賀からは西に向きを転じ、小浜線を進んでゆく。小浜線は若狭湾沿岸を進む格好となってはいるが、意外と内陸を走り、起伏が激しい。列車はディーゼルのキハ58系2両で、坂にさしかかると途端にスピードが出なくなる。夏の旅行の際にはあまり気にならなかったのだが、旧式気動車がいかに非力かということに、このとき気づかされた。
美浜付近では海岸がちらと見え、次いで三方五湖が出現。いい景色ではあるが、美浜と聞くとどうも、「トラブルを起こした美浜原発」のイメージがぬぐえない。原発自体は遠いところにあるらしいが・・・。
今回の旅行のテーマの一つは、「冬の日本海を見ること」。その目的を達するべく、小浜で下車して港方面へ歩く。灰色の雲がたれ込め、内海なのに激しい波が打ち寄せて、堤防越しにしぶきがかかる。夏の山陰本線の爽やかな光景とは対照的だった。
さらに小浜線の旅を続ける。小浜を過ぎると、線路際にも海岸線が近づいてくる。これを鉛色の海と呼ぶのか、とにかくこれまで見たことのない色の海だ。沿線の山々も、まだ雪を被っているが、べったりした感じだ。
京都府に入り、東舞鶴で列車を降りる。外は暗くなり始め、あとは帰る一方なのだが、今一度雪国の景色を味わうべく、街を歩いて海岸へ出、「夕潮台公園」の小高い山の上から舞鶴の街を眺める(下写真)。今回は旅の目的を十分に堪能できて充実していたが、一方これで終わりかという寂しさもこみ上げてくる。
そのまま東舞鶴に帰るのもなんなので、バスに乗って西舞鶴へ進もうと思いたち、国道のバス停にやってきたバスに乗り込んだ。方向的に、当然西舞鶴へ行くだろう、と思いきや、どうもおかしい。だんだん人里離れたところに入ってゆき、乗客もいなくなってしまった。そう、バスを乗り間違えたのだ。
ついに、なにやら海岸沿いの漁村のような所に到着し、そこが終点だった。外はもうだんだんと暗くなる。しかしこのときの私には、「バスでもと来た道を引き返そう」という発想は毛頭なく、海岸沿いを歩けば西舞鶴に行き着くだろう、と、なぜか安易に考えて歩き出してしまった。
路面のあたりには、もう雪は残っていない。時折小雨の降る中、出入りの多い海岸を眺めつつ、延々1時間ほど歩く。
西舞鶴駅にたどり着いたころにはもう、周りは薄暗くなっていた。幸い自分の勘は正しかったものの、後で思うと、見知らぬ土地でよくも大胆なことをやったものだ。
福知山からは福知山線で南下。大阪に実家があるという名古屋の大学生(推定)の人と話し込んでいるうちに、沿線の雪はいつしか消えていた。